生活保護費は、最低限度の生活ができる費用が支給されます。医療負担もないので、ぜいたくな生活をしなければ生活をしていくことができます。
しかし、長期入院になったり、子どもの入学準備にお金が必要だったり、多くのお金が必要になった場合、保護費だけでは足りないといった状況になることもあるでしょう。
その際にカードローンの借入ができると便利だと考えることもあるものです。しかし、生活保護を受けている場合、原則カードローンの利用はできません。
生活保護受給者がカードローンを利用できない理由について、またお金が足りない場合、カードローンの返済がある場合などにおける対処法について解説します。
生活保護受給者は原則カードローンでお金を借りることはできない
生活保護受給者は、原則カードローンでお金を借りることはできないと考えましょう。なぜカードローンでお金を借りることができないのか?その理由について解説します。
カードローンの借入は「生活保護制度」の趣旨から外れてしまう
生活保護とは、次のような趣旨のもと提供されるセーフティネットです。
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
カードローンを契約してお金を借りることができれば、最低限度の生活ではなくなってしまう可能性があります。
また、カードローンを借りるには返済できる収入があることが前提です。カードローンの返済ができるくらいの収入があれば、生活保護は必要ないということになります。
生活保護受給者はカードローンの審査に通らない可能性が高い
カードローンの契約には審査があり、生活保護を受けている状態では審査に通らない可能性が高いと考えられます。
生活保護を受けられるのは、次のような条件に適用した場合です。
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
保護費を受給する際の要件には、次のような点があります。
- 預貯金などの財産、土地や家などがない
- 年金や公的な手当などを受けられない、もしくは受けられても生活できない
- 健康上の理由で仕事ができない
- 親族などから援助を受けられない
上記のような要件に適していなければ、生活保護を受けられない可能性があります。
カードローンの審査では、定期的な収入があることやローンやクレジットカードの返済遅延や滞納、自己破産などの債務整理について調査をします。勤務先への在籍確認や勤続年数などもチェックするでしょう。
また、カードローンの審査では本人確認書類の提出が必要です。カードローンで求められる本人確認書類としては、運転免許証や健康保険証などがあります。
保護費を受給する際、医療費は医療機関の直接支払われるため、国民健康保険証は返すことになっているため、カードローンの契約に必要な本人確認書類としては利用できません。
生活保護を受けているという理由だけでカードローンの審査に落ちるとは限りませんが、今は仕事ができるとしても健康状態によって仕事ができなくなるリスクもあると判断されることもあります。
そのような状態でカードローンを借りる審査に通るとは考えにくいでしょう。
カードローンの利用ができたとしても返済をしていけない可能性が高い
生活保護受給者はカードローンを利用してはいけない、と法律で決められているわけではなく、カードローンの利用ができたとしましょう。しかし、カードローンの返済を続けていくのは簡単ではありません。
保護費は最低限度の生活費が支給されるため、ぜいたくができるほど支給されることはありません。仕事をして収入を得ても、収入で得た分は(勤労控除があるものの)保護費から差し引かれます。
収入が多くなれば最低生活費を上回ることになり、保護費の支給は打ち切られてしまいます。たくさん仕事をして稼げばカードローンの返済ができるということにはなりません。
それどころか、カードローンの返済が負担になっていく可能性が高いです。カードローンで借り入れを続けていれば利息が増え、返済額が増えていきます。毎月の返済額が増えてしまうこともあるでしょう。
もし、状況によってカードローンの利用が特別認められるようなことがあったとしても、カードローンの借入は収入として報告しなければなりません。
審査通過できてもカードローンの利用は報告しなければならない
生活保護費は、最低生活費から収入を差し引いた金額が支給されます。仕事をしている場合、収入について毎月報告をすることになっていますが、カードローンの借入は収入として報告しなければなりません。
カードローンを利用しても黙っていればばれないだろうと考えるかもしれませんが、定期的にケースワーカーの訪問調査があるので、カードローンの利用がばれる可能性は高いです。
福祉事務は生活保護受給者の銀行口座などを調査が認められています。保護費ではできないようなぜいたくをしている、どこからかお金を借りているのではないか、など不審な点があれば調査が可能です。
カードローン以外の借入も収入として報告する必要がある
収入として報告する必要があるのは、勤労して得た収入のほか、年金や手当、親族などからの仕送り、生命保険などの給付金などがあった場合です。
もし、友人などから個人的にお金を借りた場合でも、申告する必要があります。収入は保護費の減額となるため、申告を怠ると保護費の不正受給とみなされてしまうリスクもあるので注意しましょう。
生活保護受給者がカードローンを利用するのは危険!その理由
カードローンの審査に通過できれば、生活保護受給者でもお金を借りることが可能です。しかし、生活保護を受けている以上、カードローンでお金を借りるのはさまざまなリスクがあります。
カードローンの利用は生活保護費の減額もしくは支給停止につながる可能性がある
前述したように、カードローンの借入は収入として報告しなければならず、保護費が減ることになります。金額によっては保護費の支給が停止になる可能性もあるでしょう。
保護費は収入が最低生活費に満たない場合に支給されるものであり、最低生活費から収入を差し引いた金額が支給されるからです。
そもそも、カードローンの借入や返済が認められることはないと考えられるので、カードローンの借入や返済が発覚したり、申請を怠ったりすれば生活保護費の不正受給となることもあります。
生活保護費が打ち切られたら生活に困窮してしまう
生活保護を受けるときは、どこからもお金を借りられず、収入もなく、生活に困っていたはずです。もし、保護費が打ち切られたり、罰金を払わなければならなくなったりしたら、生活に困窮してしまうでしょう。
生活保護は次のような費用が支給されたり、負担なしでサービスが受けられたりするものです。
- 食費や光熱費、被服費などの日常生活に必要な費用
- 家賃
- 義務教育を受けるための学用品費
- 医療サービス(本人負担なし)
- 介護サービス(本人負担なし)
- 出産費用
- 就労に必要な技能修得などにかかる費用
- 葬祭費用
生活保護制度は最低限度の生活を助けてくれる制度です。それが利用できなくならないよう、ルールは守るようにしましょう。
保護費を受給していてもどうしてもお金が足りない場合の対処法
急な出費があったり、どうしても購入しなければならないものがあったり、状況によっては保護費だけでは足りなくなることもあるでしょう。その場合は、カードローンの借入を考えるのではなく、担当のケースワーカーや役所などに相談をしましょう。
公的融資が受けられることもある!担当のケースワーカーや役所に相談
生活費に困ったら、担当のケースワーカーや市役所・区役所、地域の福祉事務所などに相談をしてみましょう。
仕事ができれば就労や研修などのアドバイス、お金の使い方などを指導してくれるほか、可能な公的融資制度を紹介してくれるケースもあります。
生活保護受給者が利用可能な公的融資制度には、次のようなものがあります。
対象 | 予想外の事態(出生や入学、入院や退院など)で特別に対応が必要になった場合 |
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一時扶助の種類 |
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支給には条件があり、必ずしも受給できるというわけではありませんが相談をしてみるとよいでしょう。
対象 | 生活保護費(雇用保険や住宅手当など公的給付)が開始されるまでの生活に困窮している |
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貸付金額 | 10万円以内(無利子) |
連帯保証人 | 不要 |
福祉事務所が借入の必要性を認めれば、以下のような生活福祉資金貸付制度を利用することができます。
生活支援費 | 生活を立て直すまでに必要な費用 |
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住宅入居費 | 敷金や礼金など |
一時生活再建費 | 就職のための技能習得に必要な費用や、滞納している公共料金・債務整理に必要な費用など |
福祉費 | 技能習得に必要な費用や住宅の増改築や補修費用、福祉用具の購入費、介護サービスに必要な費用など |
緊急小口資金 | 生活を維持するために緊急に必要な費用 |
自治体によって貸付条件などが異なります。また、資金の種類によっては生活保護費からの返済はできない場合があるので、担当のケースワーカーとよく相談をすることをおすすめします。
返済できない場合は自己破産を検討する
カードローンや住宅ローンなどの借入は、保護費から返済することは認められない場合があります。
住宅ローンがあるために保護を受給できないことはありません。ただし、保護費から住宅 ローンを返済することは、最低限度の生活を保障する生活保護制度の趣旨からは、原則として 認められません。
引用元:厚生労働省 生活保護制度 「生活保護制度」に関するQ&A Q 住宅ローンがありますが、生活保護を受給することはできますか?
そのため、カードローンなどから借りたお金は、保護費以外の収入から返済をしていかなければなりません。しかし、それは容易なことではないため、任意整理や自己破産などを検討する必要があります。
受けることはできます。ただし、生活保護費から借金を返済することは望ましく ありませんので、弁護士などの法律の専門家と相談して任意整理や自己破産など、 借金の整理を検討していただきます。
債務整理には、自己破産以外にも任意整理や個人再生といった方法があります。任意整理や個人再生は借金の減額や分割支払いなどになる点はメリットですが、借金がすべて帳消しになるわけではありません。
毎月の返済額が減ったとしても、生活保護費からの返済は基本的にできません。収入があっても返済するのは難しいため、自己破産を選択する可能性が高いです。
自己破産をすれば、借金の返済はしなくて済みます。ただし、自己破産をするには弁護士費用や裁判所費用が必要です。その場合は、「法テラス」(日本司法支援センター)に相談をしてみるとよいでしょう。
勤労による収入は控除があるため生活保護費が増える
生活保護を受給していても仕事をすることは可能です。収入は保護費から差し引かれるとは言っても、勤労による収入には勤労控除があるため、保護費から収入の全額が差し引かれるということではありません。
生活保護は最低限の生活ができるようサポートをする制度ですが、受給者の自立を促す役割もあります。そのため、仕事をした方が保護費だけで生活をするより保護費が増える仕組みになっています。
ただし、仕事をして収入を得た場合はなからずケースワーカーへの報告が必要です。報告をせずに仕事をして収入を得たとなれば、不正受給となり生活保護の打ち切りや返還、罰則などがあるので注意しましょう。
就職サポートを利用しながら継続的にできる仕事を探す
厚生労働省では生活保護受給者など、生活に困っている人たちの自立をサポートしています。その取り組みとして、ハローワークや自治体などと就労支援体制をつくり、就労に関する相談やアドバイス、スキルの修得支援などを行っています。
福祉事務所やハローワークなどに相談すると、就労に関する支援プログラムを作成してくれます。担当者が要望やキャリアなどを踏まえ今後の仕事について相談にのってくれるとともに、履歴書作成や面接指導なども行います。
必要であれば就職するための準備としてセミナーを受けることも可能です。
また、保護費の中には技能習得費があります。勤労に必要な職業訓練などもあり、資格やスキルを身につけることが可能です。継続的な仕事探しのためにも、活用してみることをおすすめします。
収入が増えても最低生活費を上回ることはできないので計画的にお金を使う
収入を増やすことは可能ですが、最低生活費を上回れば生活保護費は出ません。また、収入がない場合はもちろん、家計簿をつけたり、衝動買いをしないようにしたり、計画的な金の使い方をする必要があります。
生活保護費がいくら受給できるかは、お住まいの地域や家族構成によって異なります。参考として印西市(3級地-2)の場合を見てみましょう。
生活扶助 | 65,200円 |
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住宅扶助 | 37,200円 |
生活扶助 | 127,670円 |
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児童養育加算 | 10,190円 |
住宅扶助 | 48,400円 |
上記の金額は目安なので、実際は異なることがありますが、受給できる保護費はおおよそ10万円~20万円ほどです。
勤労による収入が増えれば、生活は少し楽になるかもしれませんが、最低生活費を上回ることはできません。保護費が受給できても、収入が増えても、高額なものを購入したり、贅沢三昧をしたりすれば、生活できなくなってしまいます。
ぜいたくな生活をしていることがかれば、生活保護の打ち切りなども考えられます。保護費は計画的に、無駄遣いなどを控えて使うことが必要です。
そうは言っても、生活保護を受けていると楽しみがなくなってしまうわけではありません。国や自治体から受け取っているお金なので豪遊するわけにはいきませんが、「最低限の健康と最低限の文化的な生活」をしてもよいのです。
「生活保護受給者のカードローンの利用」に関連するよくある疑問
「生活保護受給者のカードローンの利用」に関連するよくある疑問を集めてみました。参考になさってください。
Q カードローンを利用したことを申請しなかった場合、どのようなリスクがありますか?
A 不正受給と判断されれば、生活保護費の減額、打ち切り、またはさかのぼって受給した金額の全額返済などのリスクがあります。
カードローンでの借入や返済は原則認められていないため、それを申請しなかったとなると不正受給とみなされる場合があるので注意しましょう。
Q 生活保護受給者はカードローンの審査は通りますか?
A カードローンの審査に通るのは厳しいでしょう。生活保護を申請している状態は、仕事をしていない、もしくは仕事をしていても収入は多くないと考えられます。
カードローンの審査では、返済能力の調査を行い、返済可能だと認められなければ審査通過はできません。
Q 生活保護受給者でも働いて得た収入からであれば、カードローンの返済をしてもよいですか?
A 原則、生活保護費から借金の返済はできません。それは勤労をして得たお金でも同じです。生活保護制度は最低限の生活をサポートするものなので、収入があっても生活保護費を受給している以上、望ましくないと考えられます。
Q 生活保護費だけではお金が足りない場合、どうすればよいですか?
A ケースワーカーに相談をしましょう。状況などによっては公的融資を受けられる可能性もあります。ハローワークや社会福祉事務所などでは、就職支援も行っていますので就職をして収入を得られるようにするのも方法の一つです。
Q 生活保護受給者で仕事をして収入を得ると生活保護費から差し引かれると聞きました。それでは仕事をする意味はないのでは?
A 収入(勤労で得たもの、年金、贈与、売却して得たお金など)があった場合、生活保護費から差し引きはありますが、勤労で得た収入に関しては勤労控除があります。
仕事をしていた方が、していないよりも受給できる保護費は多くなる仕組みとなっています。仕事をするメリットはそれだけでなく、社会保険に加入できたり、社会的信頼を得たりすることも可能です。スキルを身にみつけることで自立に向けた準備もできるでしょう。
生活保護を受けている状態でのカードローンの利用は難しい
原則、生活保護受給者はカードローンの借入はもちろん、カードローンの返済も認められません。借入があった場合は収入として申告が必要で、その分保護費が減額されます。
もし、黙って借入や返済をしていた場合、生活保護費の減額や打ち切り、不正受給と判断されれば罰金などの罰則を受けることになりかねません。
また、カードローンの契約は継続して安定した収入があることが前提です。生活保護を受けている状態では審査通過は厳しいと考えられます。
カードローンの返済が残っている場合は、基本的には自己破産をすることで返済が免除されます。借金で困っているなら、ケースワーカーや弁護士に相談をして適切な対応をしましょう。
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